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私達が出会う前、アーサーはネパールに4年間住んでいた。 ネパール人の友達に連れられて、彼の生まれ故郷の村にアマ (ネパール語で“お母さん”) を訪ねる内、桃源郷のようなその村に、アーサーはすっかり魅せられた。

他所者の自分に心を開いた村の人々に、感謝の気持ちを伝えたい、何かできることはないだろうか... 彼の思いはやがて、村から1時間、急な坂を登った所にある学校に、自費で建てた図書館という実を結んだ。

このウェブサイトの Nepali Village Library ページは、図書館にまつわる実話を写真をまじえて詳しく語っているが、残念ながらまだ日本語になっていない。 興味のある方は、上のブルーリンクをクリックして、英語のページへどうぞ。

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私の図書館は驚くべきスピードで実現して行った。 1980年代半ばにネパールの田舎で、これ程多くの、しかも彼らの母国語で書かれた本が、無料で地元の人々の手に届く所は他に無かった。

私の知る限りで、村の図書館はもう一つ、ジョムソンにもあったが、その蔵書の大部分は英語、ドイツ語、フランス語、日本語、つまりトレッキングに来た旅行者が残した本で、読めるのは教育を受けた裕福な人達だけだった。

誇りに思う理由はたっぷりあった。

けれども、次から次へと現れる問題に解決を迫られるのには、全く神経を擦り減らした。 私のネパール語は十分ではなく、ルピーは指の間から流れ落ちる一方、そして何よりも知らないことが多過ぎた。

コシデカへ行き、図書館の仕事を無事終える度、私はほっと一息ついて、村に足を向けるのだった。

尾根から下る、曲がりくねった細い土道、
小さな集落に来ると幅を広げ、
草の急斜面にジグザグを描き、
一時間歩けば、村が見下ろせる。

あそこがアマの家、隣の二軒にほとんど隠れて。
その後ろ、左手に大きな川、
向こう岸、砂浜の上の山肌は、険しくて何も建てられない。
畑を網の目に走る畦道、
乾いた川床をうねるコーラの流れ。

夜明け

コーラで
水瓶を満たす前に
女が立ち止まる、
もうすぐ他の村人達も来るだろう。

でも混んでるのを見たことが無い。

飲んで美味しく、洗濯にも鍋を磨くのにも良い水、
笑い、喋り、心地好い静寂を楽しむ場所、
幼い頃から知ってる人達と共に。

大雨の季節
渉るのは
命取り。

近くで見ると、どの家もどっしり大きい、
家畜は一階、
人間は湿気の少ない二階、
ご飯を作るのは屋根裏で。

一階建てのつつましい家も
同じ分厚い土壁で出来ている。

至る所に
納屋や菜園、
石垣で区切られた小径。

母親の家で、ラームはいつも落ち着かない様子だった。
カトマンドゥに住む彼には、電話もあれば、
大きな事務机、回転椅子や電灯もあった。
アマの家は土の床。

一人で山を下り始めると、
彼女の家に泊まるのもずっと気安くなった。

私が村に惚れ込むのを見て
アマは私を温かく受け入れ、
息子にクリスタを会わせてしまった後も
アマは私を許してくれた。

左側
ラームから離れて座っているのは、
一階で雑貨屋を営む叔父さん。

ビリ、マッチ、ろうそく、灯心、お香、油、灯油、
塩、砂糖、米、小麦、スパイス、お茶、
ガラスの腕輪、ネックレス、ヘンナ、
彼の店には何でもあった。

雑貨屋とちっぽけなチャイ屋を過ぎると
道は狭まり、
ゴロゴロ岩の間を縫って、
コーラを渉り
インドへ至る。

若くして夫を亡くしたが、
アマは立派にやってきた。

彼女のもとで、家の田畑は豊かに実り、
台所の、高さ1mもある籠は
穀物があふれんばかり。

ゆっくり、少しずつ心に染み入った
この情け深い小柄な女性は、
私に食べさせた物全て、自分で育てたのだと。
食事を作り
掃除をし
家をきちんと保ちながら。

夜明け前、何より先に
アマは祈り
神々にお香を捧げた。

それから毎朝バフの乳を絞った。

ゴヴィンダ

アマの夫は既に亡く、
息子二人は町に住む、
運ぶ、切る、掘る、
力仕事は彼がした。

アマのご飯をたっぷり食べ、
服を買ってもらう、
彼は家族の一員だった。

いつも笑みを浮かべて。

運の良い奴
朝早く、庭で
マヤと一緒に
働くなんて。

マヤ

召使いと言うよりも
アマにはない娘。

上の部屋でご飯を作る、
ベランダで
コーラの水辺で
二人はいつも一緒。

優雅で強く、活き活き
しとやか、
すでに智恵深い。

ジュリナート

裕福、有力
彼の村も、地元の小さなお寺も
彼の名字を名乗った。

都会の学校で学んだが、
電気やガラス窓や自転車に
背を向けて、
彼は自分の王国、村へ帰った。

一つ先の村の
結婚式、
私が見ている前で
彼は主賓を務めた。

笑い、微笑み
気持ち好く、大らか
満ち足りて、
ほろ酔い加減の
愛妻と二人で。

毎朝一番、彼は
農場の一日を軌道に載せる
人々や動物の世話を焼き、
畑の面倒を見た。

それが済んだら学校まで
300mの険しい登り、
校長の仕事が待っている。

給料が要る訳じゃない、
正しいと思うことを
彼はしただけ。

でも時には迷うこともあっただろう。

図書館の献呈式、
彼はいつものジュリナートではなかった、
学校の外にずらり並んだ大きな車、
太った柔な、首都のお偉方、
皆揃ってやって来た
彼が与しないと決めた世界から。

ジュリナート校長は一分の隙もない、
その日の彼はヒゲも剃らず
髪はざんばら、
まるで毛沢東主義の
過激派みたい。

シャンティは憑かれたように、
目が釘付けになったまま。

ある夕べ
ジュリナートの家で
とうとう私は打ち明けた、
ネパールを去らなければならないと。

彼は愕然とした。
「何で言ってくれなかったんだ、
どうか私に任せてくれ。」

おそらく彼が考えたのは、
相応しい地元の女性を見つけ
私の妻にして、
ビザを取れるようにすることだろう。

だがもう遅過ぎた、
私は燃え尽きて、
新しい人生を求めていた。

それでも私は知っている
とても美しいものを逃したことを。

アマのベランダで
レディ達 が
ご馳走の準備にいそしむ。

明るい陽だまりに
アマのお母さん、
巧みな手は休みなく、
葉っぱのお皿を
マヤがしくじったと、
弾ける笑い。

マヤも負けずに笑い転げる。

ゆったり座る
アマを
包む
しっとり、柔らかな温もり。
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